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しがないゲーオタ女子の真・闇ブログ

高畑勲とアニメ版じゃりン子チエ、慈愛のまなざし

先日の高畑勲監督の訃報に接し、胸に去来した何かをひとつ、ふたつと綴ってみる。今回はゲームとあまり関係ないような、あるような。

西川のりおが高畑さん悼む 「じゃりン子チエ」テツで「当たり役くださった」/芸能/デイリースポーツ online

ハイジや火垂るの墓の話だけじゃなく、もっとじゃりン子チエの話聞きたいよ! と思ってたので、西川のりおの追悼コメント有り難い。アニメ版じゃりン子チエは声優キャスト含めて本当に素晴らしい。

2018/04/07 06:13

各方面からあらゆる追悼コメントが寄せられていたが、自分はこの西川のりおのコメントがもっとも胸を打ち、グッときてしまった。なぜなら自分が一番好きな高畑勲作品が、アニメ版「じゃりン子チエ」だからだ。氏の代表作として主に挙げられる「アルプスの少女ハイジ」「火垂るの墓」「平成狸合戦ぽんぽこ」などをあえて差し置いたうえで、マイオールタイムベストが「じゃりン子チエ」なのだ。

ネットの断片情報によると、当時の声優出演ギャラはあまり高くなかったようだが、アニメ史上、これ以上のはまり役がないと断言しても過言でないほどのキャスティングだったテツ役の西川のりおが、今でもアニメ版「じゃりン子チエ」を大事に思い、高畑勲に感謝しているがとても嬉しく、感銘した。

 

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 「じゃりン子チエ」は原作漫画が好きで、もちろんKONAMIファミコン版ゲームも、一度手放したソフトを中古で探して買い直して遊びまくった。劇場版アニメでビジーフォーが歌う主題歌「ジャリジャラタイム」のイントロバージョンを久々に聴いて改めて気づいたが、これ冒頭のフレーズがゲームの各章オープニングのジングルと一緒だね。

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同じ双葉社漫画アクション連載、かつ「ホーホケキョ となりの山田くん」のいしいひさいち作「がんばれ!!タブチくん!!」のアニメ映画版の主題歌(エンディング曲「WAOH!!」)もこんな感じのサンバ調だった。歌と作曲はスターダストレビュー根本要フュージョンとサンバ、これぞ東京ムービー節。大滝詠一作曲の「がんばれば愛」もよかった。

脱線。ゲーム版に話を戻すと、主要キャラ3人(チエとテツの2人+小鉄の1匹)の三章構成のアドベンチャーパート、バラエティ豊かなミニゲームもよくできていたし、大阪の下町イメージから連想されたようなブルース調BGMもとてもよかった。開発スタッフは原作をかなり熟知して制作してくれたのだと思う。

あのゲームの影響で、祖父や父から花札を教わりながらオイチョカブも覚えたりした。そういえばSIMPLEキャラシリーズでじゃりン子チエ花札が出てたが、あっちは未プレイだった。

じゃりン子チエTHE花札

 

アニメ版「じゃりン子チエ」は、DVD化もしてるしアニメ専門チャンネルでも時おり放映されているものの、なかなか見る機会がなかったところに、数年前、Huluの配信サービス開始時に、アニメ版全65話が配信されたと聞きつけ、14日間無料トライアル中、一気にすべて視聴した。その後しばらくしてHuluは解約してしまったが、むしろ「じゃりン子チエ」を見るためだけにHuluに加入したほどの衝動だった。

 

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主に通勤移動中、iPhoneで視聴していたのだが、ふと気づけば、なんとなく気に入ったシーンを何枚もスクショ保存していた。野球してたら看板が落ちてくる後期版タイトルコールのSDキャラがかわいくてお気に入り。スクショの中からいくつかのシーンを紹介したい。

 

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アニメ版でも、幼少の頃から読んでいた原作漫画でも、特に好きなキャラの花井渉。こういうタイプが個人的好みってわけでないが、テツとの隅に置けない奇妙な友情関係や、気弱だけど温厚で誠実な人柄が何となくいいなーと好意を持っていたら、渉に恋人がいて婚約、結婚してしまい、まるでリアルに失恋したような喪失感だった……渉と結婚したかったよ!! フィアンセの朝子にもつい嫉妬してしまうけど、朝子がテツの苦手なタイプっていう力関係逆転設定は、なんとなくいい。

 

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テツとヨシ江の出会いと馴れ初めエピソードから。地区対抗リレー大会でヨシ江に負けたテツが、再戦のためヨシ江を呼び出したら、ヨシ江がデートの誘いだと勘違いし、スカートを着てお弁当を持参してきたシーン。若い頃のヨシ江かわいいなー。駆け足が速いところもチエにそっくりで、チエも成長したらこんな感じに(テツみたいなダメ男と出会って結婚?)なるのかな、と思った。

 

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テツとヨシ江の思い出の喫茶店デートを、あとをつけたチエたちが見守るシーンで、チエがテツがなぜガチガチに固まり、お母はんがなぜあんな楽しそうに笑っているか不思議がるところで、突然気づかされる。

娘のチエが今まで見たことのない、母・ヨシ江が本来持つ女の顔、破天荒なテツを手玉にしてまるごと包み込んでしまうほどの女の包容力……同性視点から見た、ヨシ江の“デキるオトナのオンナ”の凄味を見せつけられただけでない何かを……語彙力がないのでうまく言語化できないのだが、実は高畑勲って、人間、特に女性の繊細な表情やリアルな心情の機微を描くのが、すさまじく得意なのでは? と気づいたのだ。

 

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はるき悦巳の原作絵でも時々描かれる、ふと見せるチエの大人っぽい、物憂げな横顔とまなざし。多少大げさかもしれないが、前出の渉やヨシ江にも見られる慈愛に満ちた瞳の奥に、深い人情や人間愛をたたえているように感じられるのだ。劇場版は線も絵柄も洗練されて、より一層それを感じさせる。高畑勲作品のキャラクターたちは、原作モノも含めどれも造詣がいたってシンプルだが、表情に目ヂカラがあるというか、フトした表情、瞳の光やまなざしひとつに、見る側の想像力をかきたてられ、魅せられてしまう。

アルプスの少女ハイジ」から何となく感じていた、高畑勲作品のまなざし。改めて全話視聴してみて、アニメ版「じゃりン子チエ」はその真骨頂のように感じられたので、自分にとってより一層大好きなアニメ作品になった。

 

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氏の事実上遺作となった映画「かぐや姫の物語」は、公開前の制作ドキュメンタリー番組を見て興味が湧き、劇場まで観に行ったが、やはり女性の描き方や仕草がすごく繊細で、象徴的に感じられた。かぐや姫の厳格な教育係の相模に「ハイジ」のロッテンマイヤーを重ね合わせてみたり、「火垂るの墓」で西宮のおばさんが、握り飯を作った手についた米粒をついばむシーンは何気ない仕草だが、普段から女性を観察していないと描けないと思った。氏の個人的な女性像がどのようなものかは存じ上げないが、同性から見ても共感してしまう、リアルな女性像の浮き彫りを見事に表現されているのだ。

 

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実はこの2月に、初めて三鷹の森ジブリ美術館へ行ってきたばかりだった。宮崎駿監督のフルCG初挑戦の新作「毛虫のボロ」は、あいにく上映タイミングが合わず見られなかった。スタジオジブリ公式サイトの追悼コメントにも宮崎駿の名前がなかったので、宮さん大丈夫かな……と今後を心配してしまう。

 

高畑勲はこの世を去ってしまったけど、残してくれた作品はこれから先の人生でもずっとお気に入りで何度も見るだろうし、あの「じゃりン子チエ」の優しくも物憂げな瞳と慈愛のまなざしに、いつまでも言葉にならない想いを馳せ続けたい。

 

ところでアニメ版の背景にこんな小ネタが隠されていたのを、近年初めて知って驚いた。まさかアニメスタッフに暴威ファンがいたとはー。先見の明すぎる。