統括音楽編の後編です。前編はこちら。
今回は、発掘した懐かしCMから、長年記憶に残り、個人的思い入れが特段に強い曲を厳選して紹介したい。昭和50年代&関東生まれなテレビっ子の追体験で、ごく一部の地域限定かつマニアックすぎるため、もはや誰も付いてこられないかもしれないが、自分の記憶のガラクタも整理したいところなので、なりふり構わずひたすら綴る。
個人的懐かしすぎるCM:ノンジャンル編
過去の断片的な記憶を取り戻すべく、YouTubeで日常的に懐かしCM集を再生しては元ネタがありそうなBGMをShazamして原曲を発掘していたところ、先日、長年探し続けてきたCMをついに見つけた。
youtu.beブラウン「コンビスタイラー」CM(1985年)※CMオリジナル曲
このCM、“突然の~ おしゃれ心に~”のフレーズと、大野雄二サウンドちっくなムーディーなメロディがいつまでも忘れられず、膨大な量の懐かしCM集を見て探し続けてきたと言っても過言でない。今の今まで、清涼飲料水のCMかと思い込んで捜索していたが、まさかの美容系電化製品CMだった。動画のコメント欄によると、日テレの朝番組「ズームイン!朝」の枠で流れていたようで、おそらくそれで聞き覚えたと思われる。若い女子の携帯用ヘアアイロンの常備が当たり前な現代を先駆けたスタイリッシュなCMで、約40年ぶりに見られて感激した。「突然の おしゃれ心に コードレス」の俳句コピーも素晴らしい。
youtu.beソフト99「ザ・ハンガー」プレゼント(1982年)※CMオリジナル曲
www.youtube.com元ネタは言わずもがな、あの有名なマッドネス主演の「ホンダシティ」CM。パロディCMとしても、同じクルマ商品という親和性も高く、楽曲も本家に匹敵するキャッチーさで、ごく一時期のみに放映されたプレゼントキャンペーンCMにもかかわらず、インパクト大でいまだ記憶に残り続けている。しかしなぜハンガーがプレゼントなんだろ……。
youtu.be藤沢薬品「和服しょうのう」(1984年)※CMオリジナル曲
ボディーガードの鍾馗(しょうき)たちとダニが怖くて怯えていた、若干トラウマなCMだが、今見るとBGMがカッコいいファンク調だし、和服イメージのギャップを利用したハイセンスなCMだと再認識できた。なぜ中国の神様・鍾馗がモチーフかというと、藤沢薬品のシンボルマークとして採用されたからとか。
youtu.beイシイ「タマゴにべんり」(1983年)
CMソングでおなじみ、フーコこと藤本房子が唄う軽快なCMソング。じつはこの曲、元ネタがあるのだとCM捜索中に気付いた。
youtu.be暁テル子「ミネソタの卵売り」(1951年)
まさか昭和オールディーズからの引用だったとは……! タマゴ食品CMに昔なつかしのタマゴモチーフ曲を起用した、いわゆる懐メロのただ乗りでなく、CM制作陣の元楽曲へのリスペクトと、楽曲の歴史を感じられた。
youtu.beハウス食品「シャンメン たまご麺」(1970年代)
世代的には見ていないCMだが、こちらも同じく「ミネソタの卵売り」がモチーフとなっている。ある世代にとっては思い入れの強い曲なのだと知れた。ところでこの動画は当CMアニメーション作家自らがアップしているもので、チャンネルを覗いてみたら、あれもこれも手がけており……セザールCMもあなただったのかー!
youtu.be松下徽章(1988年頃)
関東圏では土曜早朝のフジテレビでよく見られた、今じゃ絶対に放映できないお色気CMで、ダメ元でShazamしたら、なんと元楽曲が……オリジナル曲でなかった!!
open.spotify.comC MUSIC Professional Library「ホッピー・ステップ -30秒Type」
うわーこれだよこれ。Shazamしてみるもんだなあ……CMやTV番組用の音源ライブラリー集らしい。曲名もCMのボインボインを体現してて笑った。長年知りたかった楽曲が一発で分かって感激した。
当時なんのCMか分からなかった編
youtu.beSHサンヘルス「液体プロテイン シェイプ」(1986年)
open.spotify.comノーマン・キャンドラー「Your Smiling Face」
高麗人参茶やクロレラなど、昔ブームになった健康食品は謎めいた(うさんくさい?)ものが多く、森ミドリが謎の液体プロテインを勧めるこのCMもそのひとつで、主婦向け番組内でよく流れていた記憶。荘厳で上品なムード音楽が印象的で、Shazamしたらちゃんと楽曲があった。子供時代にTV番組やCMで日常的にイージーリスニングばかり聴いていたせいで、大人になってからこじらせてる……!
youtu.beダイワみなくるチェーン(1984年頃)※CMオリジナル曲
車のポリマーシーク加工サービス会社のCM。黒人少年のブレイクダンスやカタコト日本語の金髪女性など情報過多のせいで、子供には何のCMだかさっぱり伝わらなかった一方で、小学校でモノマネが流行ったりして、40代を過ぎても長年脳裏に焼き付いてるCMだ。テレ朝のドラマ枠やテレ東の深夜スポットで放映されていたため、てっきり関東ローカルCMかと思いきや、動画コメント欄を見ると地方でもCM目撃談があり、全国規模で「グッバイワックス」を共有できる喜びに打ち震えている。ちなみに会社はまだ現存する。
youtu.beマンションの初穂(1987年)
youtu.beハイネス恒産(1989年)
youtu.be丸増(1989年)
youtu.be大門正明「息子へ」(1985年)
いずれの建築会社系CMも、子供時分には何のCMだかよく分からなかったが、無駄に壮大な社名ジングルの印象が根強い。マンションの土地活用が盛んな時代、いわゆるバブル景気が生み出したCM。丸増のCM曲はレコード発売しており、フルで聴けて感激。CMでも父と共演し、ここで歌われている、おそらく自分と同世代であろう息子さん、偉大な親父さんを追い越しているところだろうか。
youtu.be丸菱産業「サンマッサー」(1983年)
youtu.be明光商会「MSシュレッダー」(1970~80年代)
どちらも何の装置だかさっぱり謎で、かつ商品名ジングルがキャッチーで強すぎる。大人向け番組枠でよく見かけた。いずれの企業も現存するから、やっぱりつよい。
おしゃれ&エモいソング編
youtu.beオートラマ「フェスティバ」(1986年)※CMオリジナル曲?
オートラマとフェスティバ、どちらが車名で販売店名か当時はよく分からなかったが、オートラマのCMはどれもオシャレで、外国車であるフォードの車が身近に感じられて印象に残る。クルマCMの中でもこのCMソングは特に良いのに、楽曲についてはいまだに詳細不明。手練れのコマソン作曲者の業と見受けるが……?
www.youtube.comオスカル「異国」(1981年)
アルゼンチン出身の歌手・オスカルの楽曲。ヨープレイト(ヨープレイ)はフランスの乳製品メーカーのヨーグルトブランドで、フォルクローレの切ない旋律が異国情緒へといざなう。南米アルゼンチンとはなかなか結びつきにくいイメージだが、オスカルにしてみたらフランスも日本もどちらも異国じゃないかな。
youtu.be佐藤博「Seat For Two」(1988年)
健康志向の「減塩」を「適塩」と提唱するスマートなセンス、アーバンな佐藤博楽曲の組み合わせが、最高にオシャレ。ハムのCMなのにオシャレでズルい!
youtu.beナショナル「ラジオカセット ラブコールW」(1984年)※CMオリジナル曲
情緒的なフォークソングに荻野目慶子、峰のぼるの「ハイカラな手提げを、お持ちですね」のナレーションとキャッチコピー……最強の布陣CM!! これもどこかで聴いたことのある名だたるシンガーの仕事と思われるが、詳細不明。
youtu.be東玉「人形の東玉」(1980年代)※CMオリジナル曲
ここからは、林静一イラストのCMが続く。ひな人形販売時期によく流れていたCM。ニューミュージック系ミュージシャンが歌唱、作曲していると思われるが、林静一イラストの情報以外は分からず。東玉がいい顔をウリにしているのだけは分かった。
youtu.beロッテ「小梅」(1983年)※CMオリジナル曲
こちらも林静一イラスト。小梅シリーズCMは、夢見心地なアニメーションに小梅キャンディのような甘酸っぱい楽曲で、エモさ大爆発。イマドキ令和エモエモソングPVの元祖である。楽曲はCMソングの名手・ムーンライダーズの岡田徹が手掛けているとのことで、耳心地のよさも納得できる。
マイベストCMソング女王・木村恭子
youtu.beシャディ「シャディのサラダ館」(1989年)※CMオリジナル曲
カタログギフトでおなじみ、シャディの実店舗CM。詳細を調べるまでは歌とナレーションは女優の吉田日出子とばかり思っていたが、木村恭子というシンガーソングライターによるものだと、つい最近知った。
youtu.be金鳥「エフレッシュ」(1995年頃)※CMオリジナル曲
この楽曲とナレーションも、木村恭子によるもの。ムンムンムレムレ脇の下……めちゃくちゃ覚えてる! 「ボラギノール」のサウンドロゴなど、木村恭子のCMソングは他にも多数あり、馴染み深さを再認識したが、惜しいことに2013年に逝去しており、もっと早くに気づきたかったし、もっとCM楽曲を聴きたかった。
マイベストCMソング王・福岡ユタカ
youtu.be学生援護会「週刊求人タイムス(Qタイ)」(1985年)
youtu.beENDS「金のタマゴになりたいな」(1984年)
〝磨けば光る 金の卵~〟の歌詞と、安西水丸のイラストがずっと記憶にあったものの、何のCMか長年不明だったCMが、CM集を見まくってついに発掘。この澄み切ったハイトーンボイスは……福岡ユタカ!
前述の木村恭子と同様、福岡ユタカもすさまじい数のCM曲を手がけており、全把握が難しいアーティスト。ユニット名義もその都度で異なっていて、こちらはENDS楽曲。個別CM動画がなくて恐縮だが、昔のナショナル証券のCM曲も本人と思われる。
youtu.beマクセル「マクセルビデオカセット HGX GOLD」(1986年頃)
youtu.bePINK「KEEP OF VIEW」(1986年)
福岡ユタカCM曲でも特に有名なのは、ホッピー神山、スティーブ衛藤など、その時代のアーティストのアルバムライナーを読むと必ず名を連ねていた凄腕ミュージシャンたちで結成されたニューウェーブバンド、PINKによるマクセルビデオテープのCM曲「KEEP OF VIEW」。PINKは、1990年代にTVK系列で金曜深夜に放映されていた洋楽ビデオクリップ番組「SONY MUSIC TV」のOPとED楽曲でも有名だった。
youtu.beSONY MUSIC TV(オープニング&エンディング)
この番組とフジテレビ土曜深夜の「BEAT UK」、CSの音楽専門チャンネルスペースシャワーTVでさまざまなビデオクリップを見まくったおかげで、洋邦問わず新旧の音楽に触れられ、多大な影響を受けた。そしてCMでも音楽番組でも、いつもそこには福岡ユタカがいた。
youtu.be今年アップされた、元PINKメンバーのスティーブ衛藤が語るPINK時代エピソード。かなり赤裸々にぶっちゃけてて面白い。REBECCAやBOØWYなど同期バンドが売れる中、マニアックさゆえに売れずマイナーな存在となっているが、PINKほど尖ってカッコいいバンドは後先にもいないと思う。この紹介を機に再ブーム到来したのでSpotifyで聴こうとしたら、配信停止しちゃってる……残念! 消費され忘れ去られるだけの広告や音楽シーンにおいて、長年忘れられないほどのCM曲、名曲を多く送り出したPINK、および福岡ユタカに、あの時子供だった世代を代表し、心から感謝したい。
以上、音楽編後編でした。もっとたくさんのCM曲を紹介したいが、また追々。クリスマス当日にアップして「メリークリスマス記事!」とかやりたかったけど、年末進行のせいで無理だったよ……。次回は年内最終エントリ「ゲームと人生編」。なんとか締まれーッ!