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しがないゲーオタ女子の真・闇ブログ

8番出口、異変を待ちながら

先日、ニンテンドースイッチ版『8番出口』の配信が突如発表された。

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なんの前触れもなく、本当に突然あっさりと移植発表&即配信というフットワークの軽さ、時代を駆けぬけるようなスピード感にシビレた。

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f:id:macgirl360:20240425230539j:image昨年末、保護猫カヌ(来月で1歳)にめっちゃ邪魔されながら、Steam版『8番出口』をクリアした。パソコンの前で徹底的に居座るのが猫。どう移植されているか気になったので、スイッチ版ももちろん迷わず買った。

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f:id:macgirl360:20240423234316j:image実は自分が始める前に、すでに家族らが先行でプレイしてしまい、全部で31個ある異変がすでに何個か解除され、自分がプレイしたら残りあと4個になっていた。Steam版も家族と交代しながらだったので、すべての異変を見たわけでない……なんか悔しいから、おじさんにぶつかり壁ハメしてウサを晴らす。
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笑顔おじさんと遭遇。これ多分Steam版では見たことないかも……!! と嬉しくなり、スクショを撮りまくった。自分の顔もきっとおじさんと同じキモい笑顔だったろう。
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小さいおじさんにも会った。本当にちっさい! 自分的には、数ある異変の中でもおじさんの異変がもっとも怖い。無機質な地下空間で、唯一の生命体であり何度も注目する存在のはずが、特に意志もなく行動し、なにか別物に操られているように不気味だ。
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こっちを見るおじさん異変。大好きなスマホにも目にくれず、死んだ目と無表情でこちらにガンを飛ばす。これが「笑顔でこっちを見る異変」の合わせ技だったら、本気で怖くて泣いちゃうかも。
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f:id:macgirl360:20240423234319j:image見落としがちな天井看板の異変と、双子サラリーマン異変。双子、なんかペラくね……? 画角のせいか、奥行きのないハリボテみたいに見える。これはスイッチというハードのスペック限界値だからショボくて仕方ないものの、Steam版よりも画素数を落として軽くしているから、超絶リアルな地下通路空間の解像度が若干低くなり、ある意味本来あるべきゲームの解像度へと落とし込まれ、よりゲームらしくなったというか。おじさんの薄い頭髪もよりメッシュぽくなり、ゲームキャラに逆進化した。

f:id:macgirl360:20240427230435j:image異変、残りあと1個……!
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f:id:macgirl360:20240427230443j:imageすべての異変を見つけた。実質1時間足らずでクリアしてしまうが、プレイ総時間よりも、異変と遭遇した実体験のほうがはるかに勝っている。お化け屋敷に入り、ワーワーキャーキャー思いっきり怖がり、出口へ出られたような安堵や解放と似ている。

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『8番出口』は、自分のフィールドワークである「日本舞台ゲーム」探しで出会った。日本の都心の地下通路をモチーフとした脱出ゲームという触れ込みで、初めてプレイした時は、正直なところ、いったい何をすればよいかまったく理解できなかった。同じ地下通路を何度もぐるぐる周るだけで、向かいから歩いてきてはスマホを見て立ち止まるのを延々と繰り返すおじさんも理不尽そのもので、「これは果たしてゲームなのか……?」と投げ出したくなった。しかし、壁の看板を注視してよく読むと、ご案内にはプレイヤーがやるべきこと=①異変を見逃さず見つける、②異変を見つけたら引き返す、③異変がないときは引き返さない、④8番出口から外に出る、が書いてあり、リアルな地下通路に惑わされて、すっかりこのゲーム本来の目的を見失いそうだった。あとは通常と違う異変を探し、自分自身の記憶、異変の恐怖との闘いだけになる。

間違い探し✕探索脱出ゲーム……このシンプルかつミニマムで、今までありそうでなさげだった新ジャンルゲームに魅せられ、今やあちこちで「8番ライク」の類似ゲームも出まくり、一大バズりムーブメントとなった。この間、ヒカキンがプレイ実況する、地下鉄乗り場が舞台の8番ライクゲームの動画を見る機会があったが、異変が怖いモンスターのドッキリ出現に置き換えられており、ただの驚かし系ホラーゲームと一緒だな……と辟易してしまった。本家の一番良さである、スタイリッシュな空間のシュールで非日常的な恐怖感が、ただひたすらプレイヤー(動画視聴者)をビックリドッキリさせたいだけのオバケや怪物に変わってしまうと、途端にダサく陳腐に見えてしまうのが残念だ。ただ、子どもや若い世代にとっては『青鬼』シリーズや『POPPY PLAYTIME』のハギーワギーのような、絵面の怖さと悲壮感のあるストーリーがウリのホラーゲーム(の実況動画)に、その動画配信者を含め、ある一定の親しみを感じており、雨後の筍の如く生えてくる8番ライクゲームのアプローチとしては間違っていないし、むしろゲーム実況動画のネタとしては、作る側・やる側・見る側も最高のバズりコンテンツになっているのではないだろうか。

先日、ネットでスイッチ版『8番出口』を買って遊んで後悔した、といったタイトルの記事を読み、タイトル力(ヂカラ)のデカさと内容にはあまり同意できなかったが、異変が何も起こらないことにも恐怖感を覚える話には、なんとなく共感した。画面をくまなくチェックし、きっと、たぶん、異変などなかっただろう……大丈夫大丈夫~、と自分に言い聞かせて進んでしまった挙げ句、また0番へ戻ってしまった絶望感なら、異変なしのほうが断然恐ろしい。見た目ですぐ分かるハッキリしたものよりも、見た目じゃ分からないものの深淵に、自分自身を疑い、信じられなくなること……疑心暗鬼に怖さを覚える。

また、あらゆる8番ライクゲームを横流しで見ていて、本家に到底敵わない点としては、地下通路の超忠実な再現だ。現実を超越したスーパーリアリティがあるからこそ、ホラー要素が引き立つのであり、ショボい背景グラフィックとダサい演出のオバケで怖がらせたり驚かせても、結局のところ、学園祭のお化け屋敷レベルでしかないのだ。

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youtu.be以前も貼った、アンリアルエンジン5のデモムービー。専門用語はチンプンカンプンでも、本物のように緻密な舞台再現と最新鋭のグラフィック技術が、プレイヤーの五感をより一層刺激しているのは確かである。

store.steampowered.com最近リリースされた『POOLS』。8番ライクゲームのひとつで、音響とあわせて、屋内プールの空間を高精度なグラフィックで見事に再現しており、リミナルスペース好きにはたまらない。近いうちにプレイしたいと思う。先日亡くなった鳥山明先生も「漫画の背景は、手を抜かずしっかり描こう」と言っていたし、描画がリアルな作品は、説得力や訴求力がより強く感じられる。

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『8番出口』開発者インタビュー。あらゆる技術を駆使して作られ、クオリティを最大限まで高めたのが本作だとよく分かる。おじさんは約14万ポリゴン……これがおじさんのリアル!! 数字がおじさんの醸し出すリアルな恐怖を物語っている。数字は正義!

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今度は電車の車両が舞台の続編『8番のりば』もついに発表され、ますます楽しみな8番ワールド。ところで『8番出口』、都会住みでない、地下鉄や地下通路にまったく馴染みのない、電車よりもおもに車社会な田舎エリアの人たちにとっては、どのように映るのか興味深い。田舎の地下道って一本道だし……でも、田舎の一本道の地下道ってだけでも十分に怖いし、田舎の地下道が舞台の8番ライクゲームがあったら、それはそれでやってみたい。作ってくれたら、もれなく日本舞台ゲーム認定します!